『志民一成テノール・リサイタル』のため、JTアートホール(虎ノ門)へ。この会場でリサイタルを聴くのは初めてでしたが、客席の雰囲気は上質で、見た目も美しく、座席も広くて快適。音響はリサイタル向きの最適な空間だと感じました。
●プログラムとチケット

●ホールのロビー


前回、志民さんの歌を聴いたのは100席程度の響きの少ない会場でしたので環境は大きく異なるのですが、演奏から受ける印象は変わることなく、作品の魅力を伝えるまっすぐなアプローチに今回も大きな感銘を受けました。シューマンも別宮も組曲全体を見渡す確かな構成力は特筆に値するすばらしさ。そして、詩の言葉と音楽が何の隔たりもなく、そのまま聴き手の心に飛び込んでくるような衒いのない品格ある演奏の数々は圧巻。確かな技術と端正な表現をベースにしつつも決して単調になることなく、多彩な情感を織り込み、時には思い切って大胆に歌い抜く場面もあり、弛緩することなく最後まで引きつけられました。
特に印象的だったのは、別宮貞雄『淡彩抄』。日本語の発音は明瞭で、ソフトでありながら前向きで芯のある歌唱、新鮮な表現の中に微細な色合いが浮かび出て、終曲「春近き日に」では一筋の光と共に強い意志が聴き手に迫ってきました。
個人的に、今回あらためて確信したのは、私は志民さんの声が好きだということ。その声を聴くことだけでも私にとっては無上の価値があり、そのうえ、自然に呼吸するように歌う(最も困難な)技術にも接することができるのだから、こんなに嬉しいことはありません。こういうコンサートやリサイタルをたくさんの皆様に聴いていただきたい。「うた」とはこういうものだと、強く感じました。
●終演後


志民一成テノール・リサイタル≪連作歌曲集を歌う≫
ピアノ:国府華子
2015年3月28日(土)14:30開演
別宮貞雄:歌曲集≪淡彩抄≫
C.ドビュッシー:映像 第1集
R.シューマン:歌曲集≪詩人の恋≫作品48
●アンコール
別宮貞雄:さくら横ちょう(『二つのロンデル』より)
R.シューマン:献呈(『ミルテの花』op.25より)
ピアニスト中桐望さん出演「スイーツタイムコンサート」(主催:宗次ホール)のため名古屋へ。
客席に入る前に、中桐さんのマネージャー、井坂さんにご挨拶。続いて、CoCo壱番屋創業者の宗次さんをご紹介くださり、名刺交換させていただきました。宗次ホールに初めて伺ったことをお伝えしたら、「もう8年もやってるんだけどね」とチクリ(笑)、とても光栄なことでした。
●公演プログラム

●宗次ホール正面玄関

コンサート前半は、ピアノソロ。
生命力豊かな音色が音符の隅々まで行き渡り、その粒立ちの良さは極めて魅力的。歌心は決して途切れることはなく、密度の高い、芯のある音楽が空間を満たしていました。
後半は弦楽五重奏とのアンサンブル。正直、この作品を、これほどまでに新鮮な印象のまま聴くことができるとは思っていませんでした。躍動感溢れる自在な音楽に魅了されました。
宗次ホール~スイーツタイムコンサート
中桐 望 ピアノコンサート~プレリュード&コンチェルト~
デビュー・アルバム発売記念
2015年3月16日(月)13:30開演
宗次ホール
ショパン:24 の前奏曲 作品28
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21 (室内楽版:コミネク=小林仁編曲)
ヴァイオリン:川上裕司、瀬木理央/ヴィオラ:小泉理子
チェロ:山際奈津香/コントラバス:上岡翔
★アンコール
ショパン:ノクターン 第20番 嬰ハ短調『遺作』
ラフマニノフ:リラの花(12の歌 作品21)
終演後、サイン会で中桐さんにご挨拶。そう、静岡公演は12月。シリーズ『作曲家の庭6ショパン』にご登場いただきます。詳細はあらためてお知らせします。ご期待ください。
●ホワイエにはミュージックショップやバーコーナーがあり、その他にも様々な配慮、工夫が施されていました。厳選された中古CDも販売されており、つい購入してしまいました。

●中桐さんのデビューCDも販売されていました。

●コンサートの前に、父親の墓参りと、「きしめん亭」のオススメ『みそかつ定食』で昼食。美味でした。

6/26(金)開催『R.シューマンの愛を歌う~西由起子ソプラノリサイタル(ピアノ:橘高昌男)』の練習立会いと打合せを行いました。
チラシ、チケットの最終確認も無事終了。4月からチラシ配布、チケット発売を開始する予定です。

R.シューマンの愛を歌う<ドイツリートの流れを辿る第1夜>
西由起子ソプラノ・リサイタル
ピアノ:橘高昌男
歌曲集≪ミルテの花≫より
≪ミニヨンの歌≫
≪若者のための歌のアルバム≫より「春だ!」 他
歌曲集≪女の愛と生涯≫
2015年6月26日(金)19:00開演 ※18:30開場
紀尾井町サロンホール(限定80席)
※「紀尾井ホール」とは異なる会場です。
全席自由4,000円
※4月上旬チケット発売予定
※当日券の販売はございません。
●ホームページ
http://homepage3.nifty.com/SINMUSICA/shinmusica/concert/concert-20150626-NI/concert-20150626-NI.html
●カンフェティ・チケットセンター
http://www.confetti-web.com/detail.php?tid=28382&
2/8(日)は「Ensemble14 第23回演奏会」(紀尾井ホール)へ。

プログラムを拝見すると、
Ensemble14(アンサンブル・フィアツェン)は、1998年8月に、バッハの『マタイ受難曲』の第2コーラスを歌おうとの呼びかけに応じて誕生した合唱団です。以来カンタータを中心に、一貫してバッハの声楽作品を歌い続けてきました。」
とあります。
通常、ソロ曲の多いバッハのカンタータをアマチュア合唱団が演奏することは困難を伴いますが、ソリストをメンバーの中からオーディションで選ぶという方式をとっていることでこの課題を見事に克服。さらに、この方式によって、一般的に合唱団メンバーが合唱曲しか練習しないという弱点を解消し、全体として高度な解釈を伴う演奏を実現していることは特筆に値します。
演奏されたカンタータは4曲。驚くほどに純粋な輝きに満ちた演奏でした。若々しく、その時に作品が生まれたかのような新鮮な音楽は、「出演者が若いからかな?」と思いましたが(いや、お若いですが・・・)、それだけではなく、演奏が進むにつれ指揮者の創る音楽世界によるものだと確信しました。ソリストは、全員が語り部と化したかのような質朴で品格ある歌唱。その真摯な立ち姿は、バッハのソロはこうあって欲しいという佇まいを具現化する、魅力溢れるものでした。
指揮者のバッハへの強い憧れと尊敬、アマチュア合唱団として真剣にバッハを歌う喜びの発露、それらを受け止め、確かな技術と経験に基づく繊細で美しい演奏をされた管弦楽の皆さんの音楽が一体化し、虚飾のない透明感ある演奏を実現されたように、私は感じました。
演奏曲一覧を見ると、まだ先は長いようですが、ぜひ全曲演奏の完結を目指して歩み続けていただきたいと願っています。

Ensemble14 第23回演奏会
2015年2月8日(日)14:00開演
紀尾井ホール
指揮:辻 秀幸
管弦楽:Millennium Bach Ensemble
声楽:Ensemble14
■プログラム
J.S.Bach / カンタータ74番 “Wer mich liebet, der wird mein Wort halten”
J.S.Bach / カンタータ43番 “Gott fähret auf mit Jauchzen”
J.S.Bach / カンタータ33番 “Allein zu dir, Herr Jesu”
J.S.Bach / カンタータ71番 “Gott ist mein König”
■アンコール
J.S.Bach / カンタータ74番 より 第1曲(Chor)
数年前、志民さんの演奏に接して感銘を受けた私にとって、待ち焦がれていたリサイタルの開催です。プログラムも興味深く、なんと別宮貞雄とR.シューマン。別宮貞雄は2012年に89歳で亡くなった日本の作曲家です。≪淡彩抄≫は別宮が26歳の時、1948年に作曲された全10曲からなる歌曲集。美しい旋律と叙情性を持つこの作品をテノールで、しかも志民さんの演奏で聴くことができるのは僥倖と言えます。≪詩人の恋≫は言わずと知れたシューマンの作品中最も有名な歌曲集。1840年(シューマン「歌曲の年」)に作曲され、現在でも多くの人々に愛されている名曲です。JTアートホールは音響に恵まれた品格ある落ち着いた雰囲気のホール。この機会にぜひお運びください。私たちも楽しみに伺う予定です。

●志民一成テノール・リサイタル≪連作歌曲集を歌う≫
ピアノ:国府華子
別宮貞雄:歌曲集≪淡彩抄≫
R.シューマン:歌曲集≪詩人の恋≫ 他
2015年3月28日(土)14:30開演 ※14:00開場
JTアートホール・アフィニス ※地下鉄「虎ノ門」駅 徒歩4分
全席自由2,000円
●お問い合わせ
shitami@hi-ho.ne.jp/090-3437-4234(志民)
作曲家・中西覚先生の楽譜販売を開始いたしました。
http://homepage3.nifty.com/SINMUSICA/shinmusica/book-list.html#Satoru


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作曲家・中西覚 Satoru Nakanishi
日本作曲家協議会・国際芸術連盟各会員。作曲集団たにしの会代表、
兵庫県音楽活動推進会議代表、関西音楽舞踊会議委員長、
ひょうご日本歌曲の会代表その他の役職。
前全日本少年少女合唱連盟理事長(現相談役)。
西宮少年合唱団・アンサンブルピリカ・女声合唱団コスモス・
プチコール夙川各指揮者。
作曲活動は、6作のオペラをはじめ、管弦楽などの作品展5回、
30回に及ぶ同人作品、発表会や数多くの委嘱作品、楽譜出版など、作品多数。
指揮活動は、各種合唱団の指揮や、神戸市室内合奏団・兵庫交響楽団・
京都フィルハーモニー室内合奏団・ニューフィルハーモニー管弦楽団・
テレマン管弦楽団などの指揮、自作オペラの指揮など多岐にわたる。
2001年にはウィーン世界青少年音楽祭で西宮少年合唱団を指揮し、
合唱の部総合第2位を受賞。
音楽教育功労賞・兵庫県文化賞・神戸市文化賞・西宮市民文化賞・
ブルーメール賞・西宮市教育功労賞など受賞。
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本日は静岡市内でソプラノ・横山靖代さんと打合せ。計画中のコンサートについての打合せと様々な情報交換をさせていただき~およそ4時間ほど~とても有意義な時間を過ごすことができました。横山さんにご出演いただく予定のコンサート「作曲家の庭~山田耕筰」(仮)は、アルト・小川明子さんとの共演で(実はお二人は藝大の同級生!)、山田耕筰の芸術歌曲を中心に、耕筰が敬愛していたリヒャルト・シュトラウスの歌曲も織り交ぜて構成しようという試みの企画です。2016年の開催を予定していますが、詳細が決まり次第発表させていただきます。ご期待ください。
さて、横山さんご出演、年明けのコンサートのご案内です。開催日は前後しますが、2015年2月開催「HOTひといきコンサート」から。静岡市文化振興財団が実施しているこのコンサートも2015年2月で200回を迎えるそうです。その記念すべき機会に、チェロ・青嶋直樹さん(2/18)、ソプラノ・横山靖代さん(2/19)の出演が決まりました。横山さんの歌う楽曲について構想を伺ったところ、さながら名歌特集ともいうべき魅力的なプログラム。この機会にぜひ沢山の皆様にお聴きいただきたいと思います。

HOTひといきコンサート≪200回記念≫
2015年2月19日(木)12:00~12:50
出演:横山靖代(ソプラノ)
静岡市役所静岡庁舎新館1階ラウンジ
入場無料
お問合せ:(公財)静岡市文化振興財団 054-255-4746
もうひとつはすでにこの場でご紹介した2015年1月11日開催「富士宮プレミアムコンサート合唱団/第5回新春コンサート」です。私にとって思い入れの深い合唱団の皆様、オーケストラと共に、ソプラノソリストとしてご出演。こちらも大変魅力的なコンサートです。ぜひお運びください。

富士宮プレミアムコンサート合唱団
第5回新春コンサート
珠玉のクラシック ~ウィーン古典派の響き~
W.A.モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク
F.クロンマー:オーボエとフルートのための協奏曲
W.A.モーツァルト:荘厳ミサ K.337
指揮:金昌国
管弦楽:アンサンブル of トウキョウ
合唱:富士宮プレミアムコンサート合唱団
オーボエ:青山聖樹/フルート:井出朋子
ソプラノ:横山靖代/メゾソプラノ:木下泰子
テノール:勝又晃/バリトン:田代和久
2015年1月11日(日)14:00 開演 ※13:20 開場
富士宮市民文化会館・大ホール
指定席3,000円/自由席2,000円/学生券1,000円
チケット問い合わせ:0544-21-9818(リアルネット)
主催:富士宮プレミアムコンサート合唱団
助成:ふじのくに文化芸術振興助成
バリトン歌手・浦野智行さん出演のコンサートに行ってきました。相変わらず美しく透明感のある音色と端正で新鮮な表現。作品への敬意と深い洞察を感じる演奏は他では決して聴くことはできません。ただ、浦野さんの演奏はたった4曲、もっと聴きたかった…。
●プログラムとチケット

終演後は場所を移してブッフェ形式のディナー。ここでは「White Christmas」と「ジングルベル」の演奏がありました。ジングルベルでは浦野さんは鈴で参加。食事はすぐに無くなり、お酒も飲めないので30分ほどで退席しました。
●鈴を持って演奏中の浦野さん

浦野さんに弊社カレンダーをお渡しし、私どもの悲願(?)である、近い将来のリサイタル開催について情報交換をしました。楽しく実りある時間でした。

Classical Music Chapel live & Party
~クリスマスにおくる~
チャイコフスキー
2014年12月15日(月)19:00開演
アイビーホール(青学会館)チャペル
バリトン:浦野智行
ピアノ:アンサンブルMegRio:毛利正×今野恵子
歌曲『森よ お前達を祝福する』(A.トルストイ)
歌曲『語るな 我が友よ』(ハルトマン詩/プレシチェーエフ露訳)
歌曲『 ただ 憧れを知る者のみが』(ゲーテ詩/メイ露訳)
『エフゲニー・オネーギン』より グレーミン公のアリア“この世のよろこびは”
バレエ音楽「くるみ割り人形」「白鳥の湖」(ピアノ連弾)
他
●アンコール
きよしこの夜(日本語&英語)
フェレンツ・フリッチャイ Ferenc Fricsay
1914.8.9/ブタペスト(ハンガリー)~1963.2.20/バーゼル(スイス)
フリッチャイはドイツを中心に活躍し、48歳の時に白血病で亡くなった指揮者である。2013年は没後50年、2014年は生誕100年ということで、数々の記念CDがドイツ・グラモフォンやタワーレコードから発売された。
●≪没後50年企画≫2013/3/8発売・タワーレコード「フェレンツ・フリッチャイの芸術」第1期/ベートーヴェン: 交響曲選集 http://tower.jp/item/3210068/
初回販売版は商品不良との連絡があったのですが、せっかくなので交換せずに記念品として保管。

●≪生誕100年企画≫2014/7/8発売・ドイツ・グラモフォン『フェレンツ・フリッチャイ/DGレコーディングズ全集Vol.1~管弦楽曲編』 http://tower.jp/item/3629174/

この二度とない機会に、フリッチャイを偏愛している私個人の想いを、ここに書き留めておきたい。
初めてフリッチャイの演奏を聴いたのは、ベートーヴェン交響曲第9番のCDだった。名古屋栄のPARCOに入っていたタワーレコードだっただろうか、表紙に惹かれ手にしたところ、ソリストがヘフリガーとディースカウ、そして「ステレオ録音」と書いてある。これが決め手となり購入した。
●ベートーヴェン交響曲第9番≪合唱≫(1993/11/1発売・DG Ferenc Fricsay Edition)
ゼーフリート(S) フォレスター(A)ヘフリガー(T)フィッシャー=ディースカウ(Br)
聖ヘトヴィッヒ大聖堂聖歌隊
フリッチャイ(指揮) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1957年12月、1958年1月・4月 ベルリン・イエスキリスト教会

当時は奇想天外な、個性的な演奏がばかり聴いていたので「特徴のない、退屈な演奏」としか思えず、一度聴いたきりだった。(今では数ある第九CDの中で最も愛する演奏のひとつ)
その後しばらくして、宇都宮の新星堂でドヴォルザーク交響曲第9番のCDを手に取った。その頃≪新世界より≫を気に入って聴いていたので購入したのだと思うが、思いがけずその演奏にしびれてしまった。特に3楽章のリズム感の凄さ、これは指揮者の能力によるものと確信した。(カルロス・クライバーのブラームス交響曲第4番を聴いたときと同様の衝撃だった。)4楽章冒頭の表現にもひっくりかえった。こんなのあり?という驚き。
●ドヴォルザーク交響曲第9番≪新世界より≫(1996/11/21発売・DG LEGEND)
フリッチャイ(指揮) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1959年10月 ベルリン・イエスキリスト教会

それからは、フリッチャイのCDを探し蒐集する日々。1961年のベートーヴェン交響曲5番の崇高な響きと佇まいに夢中になり、何度も聴いた。第1番も新鮮かつ生命力溢れる名演である。指揮者の意向でお蔵入りになっていたとされる1959年のチャイコフスキー交響曲第6番は信じられないほど凄い演奏。その深みのある音色に引きずり込まれた。(こちらは凄演すぎて繰り返し聴けない・・・)
様々な録音に接して思うのは、演奏の集中力に意外とばらつきがあること。録音時期によることも承知しているが、霊的な凄みを感じる演奏もあれば、思いのほか淡白な演奏もある。しかし、これらについても彼の人間性を想い起こさせ、より惹かれてしまう要因になっているのだ。そして、芳醇な響きや色彩を生み出す卓越したバランス感覚、作品に生命力を与えるリズム感は他に類を見ないと思う。バルトークの教えを受け、その演奏において第一人者であったことも理由にあろう。音楽に向かう真摯な姿勢、根源的な魅力でもって共演者を惹きつけてしまう音楽的才能と人間性を、演奏から窺い知ることができる。
批判を受けることを承知の上で言うと、カルロス・クライバーと同列の天才性をもっていたのではあるまいか。ただし、演奏の性格は異なるし、フリッチャイはもう少し我々に寄り添った位置にいたのかもしれない。
前述『フェレンツ・フリッチャイ/DGレコーディングズ全集Vol.1~管弦楽曲編』は、1949-1961までの記録である。この短い期間に管弦楽作品のみでCD45枚分を収録したことは、ステレオへの改変期であったレコード会社の期待の大きさの表れであるし、ハイドンから当時の現代音楽までというレパートリーもその演奏水準からすると尋常ではない幅広さだ。
あらためて、その才能と人間に想いを馳せる。1914年生まれの指揮者はラファエル・クーベリック、カルロ・マリア・ジュリー二がいる。彼らと同じように、もっと長く生きて演奏活動を続けて欲しかった。私の愛する指揮者は、ユージン・オーマンディ、イシュトヴァン・ケルテス、いずれもハンガリー出身の指揮者である。
≪イングリッシュ・テナー≫の原点に遡る。
「ミスター・ヘンデルは極めて素晴らしいイングリッシュ・ヴォイスを得た・・。」
オラトリオ『メサイア』の作曲家として有名なG.F.ヘンデルが見出し育てたテノール歌手「ジョン・ビアード」について書かれた新聞記事の一節である。彼の出現が、ヘンデルのその後の作品に大きな影響を与えた。
●ジョン・ビアード(ca1717-91)

ピアードのためにヘンデルが作曲した幾つかのアリアを見て行くと、彼の声を想像するヒントが浮かび上がってきます。それは、イタリア人テナーのために書かれたそれまでのアリアには、殆ど見られなかった、ロング・トーンの美しい、滑らかなフレーズが現れるという事です。これがつまり、極上のイングリッシュ・ヴォイスのために書かれた音楽なのです。そしてこの事から、ピアードの声質や表現形態は、限りなく現代の「イングリッシュ・テナー」のものに近いということが想像できるでしょう。(辻裕久)
≪イングリッシュ・テナー≫はジョン・ビアード(ca1717-91)にはじまり、ピーター・ピアーズ(1910-86)によって大輪の花を咲かせ、今も伝統が受け継がれている。その歴史が生み出した膨大なレパートリーは、イギリス声楽史上、重要な位置を占めている。
その歌唱技術ゆえか、彼らの来日公演では古楽作品、あるいは、人気の高いシューベルト、シューマン、ベートーヴェンの歌曲というプログラムが多いようだ。集客を考慮しての判断もあるだろうが、イギリス歌曲も存分に聴かせて欲しいと願う。
8年ほど前だろうか、イアン・ボストリッジがシューベルトとブリテンの作品を歌ったリサイタルに接した。それについて、故畑中良輔先生に「ブリテンは良かったのですが、シューベルトは・・・」と感想をお伝えしたところ、「そうだろう、僕もそう思う。」とのお返事であった。
~閑話休題~
≪イングリッシュ・テナー≫の特質は、内なる強烈な感情を秘めつつ大きな表現を避ける、日本人が共感し得る演奏スタイルの筈なのだけれど、翻って考えると、残念ながら現在の日本人が好む(興味を持つ)スタイルではないのだという納得感も。自分たちに近いものより、遠いものに憧れるという気質によるのだろうか。
イギリスの歌唱技術と伝統を彼の国で学び、演奏も数多く行ってきた辻裕久さんは、日本におけるイギリス歌曲のスペシャリストとしての草分けであり貴重な存在である。彼のことばで締め括りたい。
ピアーズの残した印象はあまりにも強く、日本人の私でさえも、様々な意味でピアーズと比較されることがあります。「イングリッシュ・テナー」の本質はとらえつつ、しかしどのイングリッシュ・テナーとも違う、“英国の味”を表現することが、私がめざすべき、私自身のスタイルの確立であり、歌手としてのアイデンティティーの確立であると信じています。
ヘンデルの愛したテノール、ジョン・ビアードと、ブリテンが生涯の伴侶として愛したピーター・ピアーズ。それぞれの時代において、イギリスの聴衆を魅了し、また後世にも影響を与える偉大な仕事をしたこの二人の演奏家は、私がイギリス声楽曲をライフワークとして歌い続けてゆく上での大きな存在です。彼らの残したイングリッシュ・テナーのレパートリーを21世紀の世界に歌い継ぐ者の一人として、私はここに、深い尊敬と感謝の念を捧げます。
●辻 裕久

【速報】第19回英国歌曲展(ten辻裕久&pfなかにしあかね)開催決定のお知らせ
テーマは「イギリスとイタリア」 (仮)です。
プログラムなど詳細は決定しだいご案内いたします。
ご期待ください!
■静岡公演 *コンサートシリーズ「世界のうた」特別企画
2015年9月6日(日)14:00開演(予定) 七間町・江﨑ホール
■東京公演
2015年9月9日(水)19:00開演(予定) 銀座・王子ホール
※参考文献
CD(FMC-5040)「ベンジャミン・ブリテン歌曲集~Ten辻裕久」
東京書籍「ヘンデル~クリストファー・ホグウッド/訳・三澤寿喜」